小説「世紀末の苦悩」
1990年から2001年までの日本とアメリカが舞台。一人の人間が苦悩から学び解放されていく様を描く。


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東京在住、30代独身男性。



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第14章 ルームメイト
まずは第1章から第13章までお読み下さい。

「あそこの掲示板をみて、あそこにルームメイト募集のチラシやメモがたくさん貼っているでしょう」と彼女は指差す。その方向にあった掲示板に近付いた。掲示板には、数多くのチラシや小さなメモ書きが、ところ狭しと貼り付けられてあった。
「家具付き部屋のシェア 一月200ドル、22番通り ノン・スモーカーのみ。私もノン・スモーカー。 問い合わせは、電話番号 415―*****」
と言うのが目に留まった。他も似たようなものだ。設備、家賃、場所、条件、問い合わせ先が書かれている。つまり、自分が住んでいるアパートや家の一室を貸す広告なのだ。そうだ。これが、ルームメイトというシステムなのだ。キッチンやバスルーム、トイレは共同で使い、自分専用の部屋が借りられる。大学が運営する寮が駄目なら、外で一般の人々の住居を間借りするしか方法がないだろう。
 秀生は、熱心にチラシやメモを一枚一枚見つめ読んだ。だが、読むたびに困ってしまった。当初、寮の一月100ドルをあてにしていたのだが、どのチラシも200ドルか、それ以上の家賃を要求している。そもそも、今回の留学予算も、寮で2年間を過ごすことを想定して計画を組んでいたから。住居費だけでも倍以上になると、かなり苦しい。それに、間借りといっても赤の他人と共同生活をするのだ。初対面同士が、一緒に暮らすということだ。こんな習慣は日本では考えられない。寮、アパート、下宿と違い、管理人がいるわけではない。トラブルが起こっても、居住者同士で解決しなければいけない。家賃を割り勘にしているということは、相手が出ていけば、相手の分を自分で負担するか、新しいルームメイトを探さなければならなくなる。実に面倒だ。これまで、家族としか同居したことのない秀生にとっては、大きな挑戦であり、リスクを背負うことにもなる。かといって、一人暮らしのためのアパートを借りるとなると、これもまた負担が大きい。
「おい、部屋を探しているのか。俺がいいところを案内できるよ。俺の家の一室なんだけど」
とそこに身長一八〇センチぐらいの黒人男性がいて話しかけてきた。アメリカ人らしく微笑んでいる。歳は二十代後半ぐらいだろうか。
「ああ、探しているけど。君が家を持っているの?」
「そうさ。俺は、バリーというんだ。よろしく。君の名は? どこから来たんだ?」
「僕は、ヒデオ・ハコザキ。日本人だ。今、丁度、部屋を探していたところなんだ。だけど、どれも高くて」
「ならば、さっそく俺のところに来てみてみないか。とってもいいところだ。大学にバスに乗って通うことが出来る。住宅地で環境もいい。何なら、今すぐ見に来ないか。車で連れて行ってやるよ」
 バリーは、そう言いながら、秀生のスーツケースをさっと手に取り、建物の外に向かってさっさと歩く。実に強引だったが、秀生は何気なくついていった。
 外には、ホンダのアコードが停まっていた。スーツケースをトランクの中に入れ込んだ。バリーは運転席に乗り、秀生は助手席に乗った。車が、発進した。秀生は、少し不安感を抱きながらも、早く住まいを見つけたい、という焦りを解消したかった。
 車は、十分ほどで住宅街についた。閑静なところだった。お洒落でこじんまりとした家が建ち並ぶ。そして、サンフランシスコらしい坂道に位置する。雰囲気からして治安も悪そうでない。
 強引に連れられていいのかという不安があったが、そんな不安がすぐに拭えるほど、雰囲気のいい場所だった。
 バリーが、車を車庫に入れる。家の一階が車庫になっている。車から外に出ると、車庫から家の中の玄関に通ずるドアから、中に入る。すぐに階段を上った。
 二階に行くと、ソファやテレビのあるリビング、キッチン、部屋のドアが二つ。簡素だが実に清潔で、居心地が良さそうな雰囲気だ。
「ここは、二人で共同で、君が使うのは、この部屋だ」
とバリーが一つの部屋のドアを開けた。ベッドと机、椅子が置いてあった。机の上には、パソコンが置いてあった。広さは八畳ぐらいあろうか。白い壁に絨毯の床。窓からは、明るい日差しが入り込む。
「机の上のパソコンは、俺のだけど古い型のだから使っていいぞ。インターネットも使い放題だ。ところで、俺はコンピューターのプログラマーなんだ。いろんな会社から仕事を請け負っているフリーランサーだ。この家は、ローンで買ったんだ。まあ、一室、空いているから、誰かに住まわせ支払いの足しにでもなればいいと思ってな。でもって、これでもきれい好きだから、ルームメイトもきれい好きでないと思ってな。日本人は、確かきれい好きだと聞いたけど、君はどうなんだ?」
とバリーが言った。
「ああ、きれい好きだよ」
と秀生は、ある程度の自信を込め言った。
「なら、よしと。それで何だけど、家賃はどれだけ払える?」
「本来、寮を申し込んでいて、そこだと月百ドルだったから」
「よし、百五十ドルならどうだ? 電気、ガス、水道は三割程度、電話代は自分の分は負担する。ネットは使い放題だ」
とバリー。
 秀生は、しばらく考え込み、自分のこれから住むかもしれない部屋をじっくり見渡した。窓からの景色も眺めた。窓からは、静かな住宅が軒を連ねる景色が眺められる。
「OK、ここに決めたよ」

第15章につづく。
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テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学




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