小説「世紀末の苦悩」
1990年から2001年までの日本とアメリカが舞台。一人の人間が苦悩から学び解放されていく様を描く。


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東京在住、30代独身男性。



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第17章 アマンダ
まずは第1章から第16章までお読み下さい。

 ヌード雑誌だ。裸、ほとんど全裸の女性達の姿を撮した写真がグラビアのページで眺められる。そして、アメリカだから、局部にぼかしや塗りつぶしのない刺激的なポーズばかりだ。秀生は、ぱらりとめくって眺めた。棚には、それ以外に何冊か同じような雑誌が並べられている。それも、ぱらりとめくって見てみた。なんだか、バリーのプライバシーを侵害しているようでいい気分ではなかったが、ルームメートがゲイでないことをしっかりと知って安心したかった。ふと気付いたことがあった。モデルとなっている女性達は、黒人や肌の浅黒いラテン系の女性ばかりのようだ。なるほど、バリーの対象は、女性でも彼と肌の色の近いものだけのようだ。
 ビー、と玄関のベルの音が鳴った。誰か来たようだ。秀生は、玄関へ向かい、ドアを開け「どなたです?」と話しかけた。目の前に金髪の女性が立っていた。とても美しい顔とすらりとした体型をしている。思わず、見とれてしまう。
「ハイ、私はアマンダよ。バリーはいるかしら?」
 女性は可愛らしい声で答える。彼女はみるところ二十ぐらいだろうか。
「あ、バリーは、もう仕事に出ているけど」
「あらそうなの。ねえ、あなたはバリーのルームメイトね。日本から来たって聞いたけど」
「イエス、僕の名前はヒデオというんだ。よろしく。君はバリーの友達?」
「バリーがいないなら仕方ないわ。そうだこれを渡してくれる。先週、ヨセミテにキャンプに行った時に撮った写真よ。頼むわね」
とアマンダは、そそくさに言いながら、秀生に写真の束が入った紙の封筒を手渡した。
「ああ、いいよ。バリーが帰ってきたら渡しておくよ」
「ありがとう。では、また会いましょう」
とアマンダ。
 アマンダは微笑みながらドアから離れ、道路に止めてあった赤いスポーツカーの運転席に乗り、エンジンをかけ車を走らせた。まるで、ハリウッド映画の1シーンを見ているようであった。女優のように美人でスタイルのいい女性、ほのかに香水の匂いもしたような。ああ、こんな美人と恋に落ちてみたいと秀生は思った。
 バリーの友人なら、紹介して貰おう。これで自分も新しい男に変身だ。アメリカは、まさにチャンスの国なのだ。秀生は、わくわくした。秀生は、とりあえずリビングのテーブルに写真の入った紙封筒を置いておくことにした。ところが、手が滑って紙封筒を床に落としてしまった。中に入っていた写真が封筒から出て床にちらばった。しまったなと思い、秀生は写真を拾い上げ、封筒に入れていった。
 ふと、一枚の写真が目に留まった。男と女が、雄大な山脈を背景に抱き合ってキスをしているシーンだ。男は黒人でバリーだ。もう一人は金髪の白人女性、アマンダだ。この抱き合っている姿を見る限り、二人はまさしく恋人同士だ。ということはアマンダは、バリーの友達ではなく、ガールフレンドだ。
 なーんだ、と膨らみかけた期待が、一気にしぼんでしまった。だが、同時に変な感触も受けた。そうだ、これは黒人と白人のカップルだということだ。アメリカでは珍しい組み合わせだと聞く。映画などを観ても、白人は白人同士、黒人は黒人同士で異性とカップルになっているものだ。人種差別は撤廃されたといっても、社会的に異人種同士、特に黒人と白人の組み合わせは受け入れがたいものとされているという。バリーなら、そのことをよく分かっているはずなのだが。どういうことなのだ。

 数時間後、バリーが帰ってきた。秀生は、アマンダが来て写真を持ってきたと言い、写真の入った紙袋を渡した。バリーは、「アマンダ」という言葉を聞くととても嬉しそうな表情をした。そして、紙袋から写真を取りだし、さらに嬉しそうに写真を見つめている。かなり深い間柄なのがうかがわれる。

 なんだか変な感じがした。アメリカは人種差別社会だといいながら、彼自身は、一番忌み嫌われる異人種同士の恋愛を楽しんでいる。このバリーという男、よく分からない。
 
第18章へ続く。
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テーマ:自作BL連載小説 - ジャンル:小説・文学




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