小説「世紀末の苦悩」
1990年から2001年までの日本とアメリカが舞台。一人の人間が苦悩から学び解放されていく様を描く。


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東京在住、30代独身男性。



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第24章 アイム・ゲイ
まずは第1章から第23章までお読み下さい。

 翌日、その日の講義が終わり、午後4時頃、自宅に戻ると、バリーが訪問者から、預かりものを受けたと言う。訪問者の名は、スティーブ・マクフライといい、サンフランシスコ州立大学心理学部の講師だという。預かりものは、その教授の名刺と秀生の学生証と100ドル札だった。バリーは、秀生に何を託されたのかを話した。
「その男、お前を、車で引いてしまって心配しているだと。お前が立ち去った後、落としたらしい学生証を見つけ拾ったので返しに来たんだ。それから、もしお前が怪我とかしているのであれば、自分にコンタクトしてくれだと。治療費とかかかっているのなら、当面はこの100ドルで工面して、もっと必要なら、彼の保険会社が払えるってさ」
 秀生は、バリーから、とりあえず預かりものを受け取ったが、受け取って、伝言を聞いた瞬間、無性に腹が立ってきた。何が怒りの源泉か分からないが、怒りがこみ上がってきたのだ。
 あのスティーブという男が、ホモ野郎が。わざわざ自分の住んでいるところまで押しかけて、そして、100ドルを渡しに来た。何ともいえない嫌悪を感じる。
 秀生は、名刺を見て、100ドル札をポケットに押し込み、キャンパスに戻るため、家を出た。

 大学の心理学部の校舎に入る。経営学専攻の秀生には、全くといっていいほど縁がなく、キャンパスでは隅の方にあり、この建物は初めて足を運ぶところだ。スティーブのオフィスのある階に行く。オフィスには、中年の女性事務員がいてパソコンを打っていた。
「すみません。ミスター・マクフライはいますか?」ときくと、
「彼は、ここにはいませんよ。今は、下の階の講義室でレクチャーをしています」
と答えた。
「講義室って、どこ?」
「304です。今はレクチャー中ですけど」
と聞いて、秀生は304へ向かうため階段を降りた。304か。その講義室に近付くにつれ、怒りがますます込み上げて来た。何か炸裂しそうで、自らのコントロールが効かなくなる危険性さえ感じた。
 304は、講義の真っ最中だった。スティーブは、机が円で囲まれた中に、一人立ち上がってレクチャーをしていた。何を言っているのか、分からないし、秀生には興味もなかった。
 スティーブが突然、入ってきた秀生に気付いた。
「FUCK YOU! あんたから、金なんて貰えないよ。YOU BUSTARD!」
とサンフランシスコに来て、覚えたアメリカン人が使うDIRTY LANGUAGE(下品な言葉)を吐き、ポケットから100ドル札を投げつけた。スティーブも、講義室にいた生徒たちも驚きの表情を隠せない。
 秀生は、スティーブをしばらく睨みつけた後、唖然とした周囲の生徒たちを見つめた。興奮度が頂点に達した自分に我にかえった。急に恥ずかしくなり、講義室を出て、階段を駆け下りた。スティーブが「おい、ちょっと待ってくれ」と大声で叫びながら、後を追う。ひたすら追いかけられる。秀生は、1階の誰もいないロビーに来ると、力が抜け立ち止まった。誰もいず、外から夕焼けが差していた。
「一体何なんだ、君はどういうつもりであんなことを? 事故でどうかしてしまったのか」
 秀生は立ち止まり、何も言わなかった。
「金が足りないというのか、100ドル出して解決しようというつもりではない。必要なら、治療費とか補償は保険会社に話しをつける。きちんと事故を報告して・・」
とスティーブが説明するのを聞きながら、秀生は、自分が何を腹が立っているのかに気付き始めた。
「ミスター・マクフライ、実をいうと僕はゲイなんだ。あなたのことを知って、だから・・」
「OK。そういうことなのか、分かったよ。それなら、何とかしてあげられるよ。君の助けになれるよ。丁度いい、今の講義は終わるところだ。その後、同じ教室の次の講義は、学部生に限らず、また、この大学の登録学生以外でも、誰でも受講できるオープンコースが始まる。どうだい、受講してみないか」
とギレンズ。
 秀生は、それを聞いて安堵感を感じ「OK、そうするよ」と答えた。

 そして、スティーブについていき、3階の講義室に向かった。
 それから、30分後、その講義は始まった。講義室は、若い大学生、学院生だけではなく、中高年の男女など、幅広い世代、男女、人種が入り交じった人々が数十人いる環境だった。オープン・コースだから、受講料を払えば、大学の学生である必要はない。夜間なので、勤務をしている人や主婦などが参加できるのだ。ちなみに学生、社会人を含めた自己啓発を目的としたセミナー・コースである。よって試験などもなく、出席と参加だけで単位取得となる。今学期を通して週1回の割合で受講ができる。
「皆さん、こんばんは。私はスティーブ・マクフライだ。スティーブと呼んでくれ。今晩より、同性愛をテーマにしたヒューマン・セクシャリティの講義を始める。ここに集まったのは、ほとんどゲイやレズビアン、またバイセクシャルの方々だろう。悩みながら、どうすればいいのか分からない、そんな体験をしてきたかと思う。私もかつてはそうだった。だが、それを克服した。同じことが皆ができるように、講義をしながら、また関連する様々な問題に関してディスカッションをしながら、理解を深めたいと思っている。それが、これから始まるレクチャーの目的だ」

第25章へつづく。
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テーマ:BL小説 - ジャンル:小説・文学




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