小説「世紀末の苦悩」
1990年から2001年までの日本とアメリカが舞台。一人の人間が苦悩から学び解放されていく様を描く。


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東京在住、30代独身男性。



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第13章 着陸
まずは第1章から第12章までお読み下さい。

「皆様、当機は、まもなくサンフランシスコ国際空港に着陸します。シートベルトをお締め下さい」
 その機内アナウンスを聞いて、秀生は目を覚ました。さっきまでずっと寝ていた。約9時間にも及ぶフライト、機内映画を観るか食事、それ以外は、睡眠状態に入っていた。
 窓を見ると、眼下に都市の風景が見えた。半島の都市である。半島の先に赤い橋が見えた。その先の半島との間の海峡の上にあり二つの半島をつないでいる橋だ。ゴールデンゲートブリッジだ。ケーブルカーに並ぶサンフランシスコを象徴する観光名所である。
 サンフランシスコ、アメリカ西海岸の街。西海岸といえば、このサンフランシスコとロサンゼルスが日本人にとっては有名だ。ロサンゼルスは、平野に広がり何百万も人が住むかなり大きな都市だが、サンフランシスコは半島にある、むしろずっと規模の小さい街なのだ。人口は70万人ぐらいだと聞く。
 19世紀、金が発見されゴールドラッシュと呼ばれるブームにより多くの人々が一攫千金を目指して移住してきた。それによる人口の急増により勾配の多い土地に無理矢理にでも都市が建てられた。それが、サンフランシスコという街の起源だったと学んだ。
 そして、その街にまさに足を踏もうとしている。秀生は興奮していた。生まれて初めての外国なのだ。テレビや映画では、さんざん見慣れた光景でも、実際にその中に飛び込んでいくとなると実に緊張する。
 飛行機は、どんどん高度を下げていく。ギーと飛行機がエンジンのギアを変える音が響いた。いよいよ着陸だ。どんどん高度が下がり、滑走路が見えてきた。ドン、と着地の衝撃を感じた。その後は、するりと飛行機が滑り込んで行く。
 しばらくして、速度が下がり、飛行機がきゅっと方向を変え、そして、停まった。
 乗客が座席からさっと立ち上がった。皆に着いていき、ボーディング・ブリッジを渡って、外に出た。その後、秀生は、荷物受け取り場所へと行き、スーツケースをベルトコンベアから拾い出した。そして、税関へ行く。そんなに混んでなく、自分のスーツケースもすぐに見つかってので大して時間もかからなかった。
 税関での手続きを済ませ、到着ロビーの玄関から外に出た。さらりと乾いた空気に触れた。夏なので暑いが、だが、日本にいた時と違い、空気は西海岸らしく乾いている。
 さて、どうしようか。どうやって大学まで行けばいいのか。確か大学は、サンフランシスコ市の南西部に位置していると聞いた。空港は、もっと南の外れに位置しているから、北の方へ向かわなければいけない。どうやってと考えたが、全く初めてだ。タクシーに乗っていくことにした。イエローキャブと呼ばれる黄色いタクシーが、ずらりと停まっている。手を挙げた。運転手が出てきた。すぐにトランクを開け、スーツケースを入れ込んだ。身長190センチはありそうな大柄の男性で、かなり重いはずのスーツケースを軽々と持ち上げ、中に入れ込んだ。
 車内に乗り込むと、運転手は「どこまで行きたいのか」と訊く。すると秀生は、「サンフランシスコ・ステート・ユニバーシティ」と答えた。
 運転手は、すぐに分かったという表情になり、さっそくタクシーを発車させた。車は、空港からハイウェイに入っていく。広いハイウェイだ。片道だけで車線が4本もある。その上、車線の幅も広い。
 数十分後、空港周辺の辺鄙な風景から、次第に高層ビルの並ぶ都市部の風景へと変わっていった。タクシーは、ハイウェイの出口を降り、市道を走り始めた。信号で何度か停まり、住宅街や商店街を抜けると、その先に大学らしき建物の集まりが見えた。
 車は、「ADMISSION OFFICE」と玄関に表示のある建物の前に停まった。
「ここでいいかな?」と運転手が言うと。
「イエス、サンキュー」と秀生は答えた。スーツケースを引っ張りながら、秀生は、その建物に入っていった。これから、入学手続きと入寮手続きをするのだ。
 さっそく初日だが、心を引き締めた。数日後には、大学院の講義も始まる。のんびりなんてしていられない。
 日本を発つ前に様々な人々から留学に関してアドバイスを受けた。日本と違い、自分の思ったことをはっきりと言わないと軽んじられるので、YESかNOかをはっきりと言い、日本で通じる曖昧な答え方はしてはいけないなどである。多民族社会だから、日本で通じるような「あ、うん」の呼吸などあり得ない、文化の違いをわきまえろと言うことだ。
 入学手続きのカウンターを見つけ、そこにいた女性事務員に入学許可書を見せた。女性は中年の感じのよい女性で、親切に対応してくれた。いろいろな書類に記入、署名。その後、簡単な写真撮影。しばらくして学生証ができあがった。
 次に、入寮の手続きをしたい、すでに申込はしていると伝えた。入寮手続きをする場所は、別室でそこに行く。そこでは、若い女性が対応してくれた。彼女は、申込の記録を見ながら、秀生に言った。
「ごめんなさい。残念ながら、学生寮は一杯だわ。空き室ができるまで待たなければいけないようね」
 彼女の言葉に、ぎょっとした。さっそくトラブルだ。これから2年間の住まいをどうしようかと。てっきり寮の申込をしていれば、すぐに入れるものだと思っていたのが甘かった。寮に入って過ごすことを想定してお金を貯めたものだから、この問題はとても大きい。
「ねえ、困っているようなら、ルームメイトを探してみてはどう?」
と彼女は、微笑みながら困った表情の秀生に対して言った。ルームメイト? いったいそれは何だ?

第14章へつづく
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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

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続き楽しみにしてます

【2008/04/10 22:40】 URL | もへ #mT5FWUeI [ 編集]



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