小説「世紀末の苦悩」
1990年から2001年までの日本とアメリカが舞台。一人の人間が苦悩から学び解放されていく様を描く。


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東京在住、30代独身男性。



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第23章 ゲイの権利
まずは第1章から第22章までお読み下さい。


 春学期になった。通常の学期なので、キャンパスに生徒がどっと増え、秋学期と変わらぬ賑わいが戻った。
学期初め、キャンパス内では、やたらとイベントが多いみたいだ。休み明けで新鮮な気分で、大学に戻る生徒たち相手なら、盛り上がると見込んでのことだろう。芝生の上では、スポーツ大会、バーベキューなどが開かれていた。
 秀生は、STUDENT UNIONといわれる建物にいた。ここは、講義室は全くないが、学生向けの売店、カフェ、ゲームセンター、レクレーション施設、そして、様々なイベントをとりおこなう講堂がある。昼食をカフェテリアで取った後、講堂を通りすがると、丁度、イベントが開かれていた。看板が掲げられており、虹のマークと共に「差別と偏見に闘おう、ゲイの権利擁護」と題目が書かれてあった。

 秀生は驚いた。そんな、ゲイの権利だと。ゲイに権利などあるものか。ゲイなんて生き方自体が間違っているだろう。そんな間違った生き方をする奴らに権利など与えていいものか。
一人の男性が演台に上がったのが目に留まった。スピーチをするみたいだ。年齢は三十代前半だろうか、身長は180センチぐらいで、ブロンドに青い目、ハリウッド俳優みたいなかっこよさだ。ふと入り口当たりで、その様子を眺めた。
「みなさん、集まってくれてありがとう。私はスティーブ・マクフライという。心理学部の講師をしている。ここに集まったみんなは僕と同じようにゲイであるか、また、家族や友人にゲイがいて、関心を持って来たのだろうと思う」
 え、こいつがゲイ。いかにも巷の女の子たちにキャーキャー騒がれそうな外見なのだが。
「三十年前、この大学では、学内における人種差別をなくそうと大きな学生運動が起こった。その結果、入学する生徒に人種に偏りが起こらないような処置が決まったり、大学のカリキュラムに多民族や多文化主義を採り入れるような編成が組まれるようになった。当時は、公民権運動の最中で、この大学に限らずアメリカ全体が人種差別撤廃の動きに流れていた。その当時まで異人種同士の結婚は一部の州で禁止されていたりしたが、それも撤廃となった。だからこそできると信じている。今度は我々の番だ。ゲイであるということでのいわれのない差別をなくすため、一丸となって闘わなければならない。」
 講堂内は割れんばかりの拍手が巻き起こった。聴衆は老若男女、人種も様々だ。何とも異様に映った。だが、不思議な熱気とエネルギーを感じる。

 秀生は、金融工学の講義が始まる時間が迫っていることに気付き、講堂を出て、経営学部校舎の講義室に向かった。

 数時間後、講義が終わった後、帰宅しようとキャンパスを後にしようと、外に向かい歩きいつも通り駐車場の前を通った。と、そのとき、車が目の前を通った。駐車場から出てきた。おっと、引かれそうになったので、避けようと体を倒した。持っていたカバンを落とした。中から教科書やノートが飛び出し散乱した。
 車が止まった。ドライバーが出てきた。
「おい、大丈夫かい?」
 秀生は、ドライバーの男をみて驚いた。数時間前、講堂で目にした男。スティーブ何とかいう男だ。
 秀生は、急いで散乱した教科書やノートを集めてカバンに詰め込んだ。スティーブが手伝おうとする。
「大丈夫。自分で出来る」と秀生は、かっとなった調子で言った。
 スティーブは、そう言われると横目で秀生の様子を眺める。秀生は立ち上がり、カバンを持ってそそくさと駐車場から離れた。畜生、やな奴に会ってしまった。
 
 秀生は自宅に戻り、大事なことに気付いた。カバンの中にあった学生証を無くしていたのだ。学生証には住所がプリントされている。どうしよう、きっとあの時だ。駐車場で落としたんだ。戻って探そうか、だが、何となく戻りたくない。誰か拾って見つけたのなら、事務局かキャンパス警察に届けられ、そこから連絡が来る。それに、なくしたといって届け出れば、再発行して貰える。気に悩むことないかと思った。

第24章へつづく。
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テーマ:BL小説 - ジャンル:小説・文学

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